中絶費用・慰謝料請求の相場
結婚を約束したのに妊娠した途端の拒否、予定外の妊娠、望まない妊娠など、必ずしも妊娠が幸せな結果になるわけではなく、時には中絶という悲しい選択肢を選ばざるをえないこともあります。中絶は女性にとって身体的な負担が大きいだけでなく、精神的苦痛も計り知れないものでしょう。中絶されることとなった場合には、心のケアを受けるなど、まずは心身をお守りください。その上で、少しでも精神的苦痛を和らげるために、慰謝料や中絶費用の請求を検討しましょう。
中絶と慰謝料
中絶することは女性に大きな負担を強いることは言うまでもありません。中絶することとなった経緯についても然ることながら、中絶が決まった後の相手男性の言動も、女性を傷つける原因となり得ます。被ってしまった不利益の補填や、少しでも精神的苦痛を和らげるために、慰謝料を請求したいと思うこともあるでしょう。
では中絶による慰謝料は認められるのでしょうか。少し前までは同意の上で性交渉を行った場合には、慰謝料の請求は認められず、中絶費用だけを折半するという見解が一般的でした。しかし、平成21年の裁判で、合意の上での性交渉による中絶でも、男性に慰謝料の支払いを命じる判決が下り、慰謝料が認められる流れとなりつつあります。
苦痛を軽減するための努力義務
では、何が基準となって慰謝料が認められたのでしょうか。先の判例では、女性の精神的苦痛を軽減するための努力を男性側が怠り、さらには苦痛を与えるような言動をとったことに対して慰謝料を認めています。つまり、男性には中絶による女性の肉体的・精神的苦痛や経済的負担を軽減する義務があるとし、その義務に違反したとして慰謝料を認めたことになります。
以下のような言動は義務違反に該当すると言えるでしょう。
○妊娠発覚後に責任を回避しようとする
○出産すべきかどうかの話合いを拒否し中絶を強要する
○中絶費用を支払おうとしない
中絶自体は慰謝料の対象外
注意しなければならないのは、中絶させたこと自体に慰謝料を認めたということではないことです。合意の元で性交渉を行い妊娠し、男性が女性の苦痛軽減に十分に努力したと判断された場合には、慰謝料を請求することは難しいでしょう。ただし、レイプ(強姦)などの合意のない上での妊娠中絶は、当然慰謝料と刑事罰の対象となります。
中絶慰謝料の相場
中絶による慰謝料が認められた判例がまだ少ないこともあり、相場と言えるものは存在しません。先の判例では慰謝料額は100万円で、中絶費用やうつ病等の治療費を合わせ、134万2302円となっています。中絶したことにより妊娠できない身体になってしまうなど、後遺症を患った場合にはさらに高額になることでしょう。また、レイプによる中絶は高額になり、その相場は200万円から600万円となっています。
中絶の慰謝料については、判例も少なく複雑な法的構成になるため、弁護士の中でも未だ意見の分かれるところです。
まずは心身のケアに専念し、あなたの味方になってくれる弁護士を粘り強く探しましょう。
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