行方不明の夫と離婚するための法的手続き
興味深い記事がありましたのでご紹介しますね。
行方不明の夫がありながら好きな人が出来てしまった場合。
結婚まで決まってしまいそうだったら・・・どうしたらいいのでしょう。
【女性からのご相談】
既婚です。夫は3年前に行方が分からなくなりました。私が嫌になったのか好きな人がいて一緒に暮らしているのかは分かりませんが、大げんかをした後に出て 行ったきりです。 当時は私も心配でいろいろ探したり、警察に捜索願を出したりしていたのですが、今ではもう諦めています。
実は今、「この人とならまた結婚したい」と思えるような人と出会い、彼も私の過去の話を全て理解した上で、「結婚しよう」と言ってくれています。夫が行方不明なのでちゃんと離婚ができていない状態ですが、彼と結婚することはできるのでしょうか?
夫が生死不明や行方不明になっていても、婚姻関係は継続します。
何年か生死不明、行方不明なら勝手に離婚になるというような制度はありません。
そのため、ご相談者様とご主人は今も結婚している状態にあります。
日本では一夫一婦制が採用されており、民法732条は、「配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない」と定めていますので、ご相談者様が彼と結婚したいとお考えでも、今の状態のままでは残念ながらできません。
ちなみに、刑法184条では『重婚罪』を定めています。2人以上の相手と同時に婚姻関係を結ぶと、犯罪になってしまうんですね。
もっとも、役所に婚姻届を 提出しても、片方が既婚だということはすぐにバレてしまいますので、役所が婚姻届を受理することはなく、今の日本で重婚罪が成立することはなさそうです。
ご相談者様が彼と結婚するには、ご主人と離婚する、あるいはご主人が死亡したという手続きをするしかありません。
離婚をする際には、夫と妻が話し合って離婚することに決めるか、裁判で離婚判決をとる必要があります。
夫が行方不明の場合には、離婚の訴えを起こすしかありませんね。
民法770条1項は、離婚理由として
(1)不貞行為
(2)悪意の遺棄(別居して夫婦としての協力を一切しない等)
(3)3年以上の生死不明
(4)強度の精神病
(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由
と定めています。
夫が勝手に出て行ったのであれば、上記の(2)(3)(5)を理由に、離婚の訴えを提起することができます。
訴える相手(夫)がどこにいるかわからないのに裁判を起こすことができるのか疑問に思われるかもしれませんね。
このような、「手を尽くしたけれども、夫の 居場所がわからない」という場合には、一定の要件を満たせば、夫に訴状が届いたとみなされる『公示送達』という制度を使って、裁判をすることができるので す。
こうして、裁判所に夫との離婚事由があると認めてもらうことができれば、ご主人と離婚することができます。
夫が何年か生死不明、行方不明であっても、勝手に死んだことになるということはありません。
ただ、残された家族は、財産や身分関係がどうなるかもわからない宙ぶらりんな状態のままだと今後の生き方を決められませんよね。
そこで、失踪宣告(民法30条)という制度があります。
行方不明になった人の生死が7年間明らかでないときに、その妻や子どもなど、夫の生死について利害 関係を有する人が請求すると、家庭裁判所は失踪宣告をすることができます。
失踪宣告をすると夫は死亡したとみなされるので、ご相談者様とご主人の婚姻関係 は終了するということになります。
行方不明になったご主人との婚姻関係を終了させるには、いずれにしろ裁判所での手続きをしなければなりません。
せっかくすてきな彼と出会うことができたのですから、きちんと手続きを行ってご主人との婚姻関係を終わらせ、新しい人生を歩き出してください。
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