失踪者の心理と失踪準備に関するまとめ
失踪(しっそう)とは、本拠地を離れて所在がわからなくなることを言いますが、この失踪の仕方も様々です。
用意周到な人は前準備を行ったり、失踪中にも身元が判明しないように様々なテクニックを使ったり…。
今回の記事では、この失踪の仕方を失踪前と失踪中に分けて解説するとともに、失踪者の心理状態にも触れていきます。
失踪の仕方|失踪の前準備編
早速、失踪者が行う失踪の前準備について解説していきましょう。もし親しい人が以下のような準備を行っていたら要注意かもしれません。
徐々に社会的なつながりを狭める
家族にも友達にも誰にも告げずに自分一人で行方をくらます場合、気たる失踪当日までに意図的に交友関係を断ち、”疎遠”を作り出していきます。
関係を断つと言っても、電話に出ない、LINEの既読をつけない、SNS(FacebookやTwitterなど)の更新をストップするといった行為になりますが、中には知人に対し「これから忙しくなる」という旨だけ伝えておく人もいます。
こうすることで、失踪後にたとえ知人から入り、それに対し連絡を長らく入れなくても「あぁ忙しいのだな」と理解されそこまで不審には思われなくなり、大事になることを避けられます。
最低限必要な現金を用意する
宿費、食費、移動費…普通の生活でも言えることですが、失踪するにしてもどうしてもお金が必要になります。後述しますが、失踪中はクレジットカードの使用はすぐに足が着く原因になりかねないため、タブーです。したがって、失踪を計画する多くの人が20~30万円は失踪前に引き出しておく傾向にあります。
失踪宣告書を残す
仮に家族などから自身の捜索願が出された場合であっても、「失踪宣告書」を置いておくことで、警察は「事件性はない」と判断し積極的に捜索をしなくなります。この失踪宣告書には、誰の関与も事件性もなく自らの意思で失踪することや、その上で自殺をするつもりはないことやいずれ帰る意思があることなどが日付と共に記載されます。
退職しておく
会社を退職するともらえる離職票は、失業保険をもらうためなら必須となる書類です。したがって、失踪後に仕事を確保してスムーズに再建していきたいと考えている人は、勤めている会社をきちんと辞める手続きを行います。
携帯電話を持たない|解約しておく
便利な携帯電話も、失踪中にはリスキーなアイテムとなります。所持していても基本的に受信機と化し、また、使用履歴から居場所が割れてしまう可能性もあります。「誰にも居場所を知られたくない」という思いが強ければ強い人ほど、携帯電話は置いていきます。
荷造りをする
自分の大切なものをカバン一つに詰め込む人、身分証と印鑑だけ持って飛び出す人、下着や衣類もしっかりと持っていく人、失踪者の性格や置かれている状況によって荷造りのタイプも様々です。
ただしあくまでも引っ越しではなく失踪になるため、前述したように心底身を隠したい人ほど携帯電話やクレジットカードなど、使用することで足が着きそうなアイテムは置いていきます。
失踪の仕方|失踪中編
失踪中の失踪者の特徴についても以下に述べていきましょう。
とにかく遠くに行く
意を決して失踪したのに、すぐに居場所が判明してしまったのでは意味がありません。債務者や駆け落ちなど、特に行先が定まっていない失踪者の場合は、「一刻も早く、とにかく遠くに」という心理が働きます。
失踪先で携帯電話を確保する
このご時世に、連絡手段が全くないのは特に雇用面に置いて不便です。また、位置情報などを検索する上でも携帯電話のインターネットはとても有効活用できます。そのため、失踪先で新たに携帯電話を入手するという方は多くいます。
携帯電話は、格安のSIMやプリペイドカード型のものは特に煩わしい手続きなしで入手できます。
職務質問を避ける
もしも家族が警察に捜索願を提出していた場合、警察は本格的な捜索は行わずとも、警察庁のデータベースの失踪者の情報を掲載し、パトロールや職務質問の際に怪しい人物を照合するため、居場所が判明してしまうリスクがあります。
ただし、裏を返せばこのような形で警察と接触しない限りは誰にも居場所を知られずに済むため、深夜徘徊を避けたり、あえてコンビニの袋を持ったり、土産物用の袋を持ったりなど、その場所に合ったカモフラージュをして”放浪者”であることを極力感じさせないようにしています。
偽名を使って宿泊する
少し賢い失踪者は、名前から居場所が割れてしまわないように、ホテルや漫画喫茶などの施設を利用して宿泊する場合に偽名を用います。
宿泊施設も宿泊客に対して慎重
ラブホテルなどは特にですが、実はホテル側は”宿泊者が室内で自殺をすること”を懸念しています。したがって、予約もせずに小汚い格好でいきなり泊めてくれと言ってくる宿泊客に対しては慎重な対応になります。
長期的に住める場所が見つかるまでは転々と移動する
行先が決まっていない場合は、まずはホテルやインターネットカフェやファミリーレストランなど、雨風がしのげそうな場所を転々とします。そうして心理的に一番安心できる場所まできたら、その場所を本格的な拠点にします。
拠点が決まったら、ただ時間を過ごすだけではなく、その地でハローワークに行って雇用を望む人への救済措置を提案してもらったり、再就職をしたり、新たに人脈を作り上げていく人もいます。
マンスリーマンションは新たな拠点に適している
失踪者の多くが新たな拠点として選ぶのは、短期滞在者向けのマンスリーマンションです。マンスリーマンションは入退去が比較的楽な上に最低限の家具家電がはじめから確保されており、最低限の持ち物しか所持していない失踪者にとっては好都合と言えます。
失踪中に困難になること
失踪中は、日常的な生活は出来ません。以下のような、様々な困難が失踪者に襲いかかります。
住民票を移せない
一般的には、拠点が変わった際には自治体に住所変更届を行い住民票も移してもらいますが、これをすると自治体経由で現在の居場所が割れてしまうことになります。
したがって、長期的に失踪生活を送りたい人は住民票も移さないため、これにより以下のような様々な制限が設けられることになります。
・新たな仕事に就きにくい
・病院に行けない
・免許の更新が出来ない
・確定申告が出来ない
収入を得ることが困難になる
前述しましたが、失踪者は失踪先での収入をどうするかといった点に一番悩まされることになるでしょう。身分も明らかではない人を雇用する企業は数少なく、あったとしても非合法的なものが多くを占めます。高年齢であればあるほど、職種は限られてしまいます。
カードが使えない
クレジットカードを利用することで自宅に利用明細が届けられるため、失踪中のクレジットカードの利用は厳禁になります。また、ポイントカードやATMからお金を引き出す際のカードも居場所が判明する確率が高いため、同様です。
頼れる人がいない
周囲との関係を断ち一人で見知らぬ土地に出向いた場合は、とてつもない孤独感や虚無感に襲われることになります。もともとずっと一人になりたかった人は別として、借金の取り立てから逃げるために愛する家族を残して逃げてきたという人は特に、切なさに押し潰されそうになることでしょう。
失踪者の末路
失踪の理由は様々ですが、失踪者は一般的な生活が行えなくなるため、多くの悩みを抱えながら生活しなくてはならなくなります。愛する人と駆け落ちしたにしても、その直後は幸福を感じられるかもしれませんが、失踪が長期化すればするほど頭を抱えるトラブルが多く発生してくるでしょう。
また、失踪者の家族や親族が捜索願を提出しても長らく発見に至らない場合、失踪宣告を申し立てることにより”死亡したものとみなされる”ことがあります。
これにより婚姻関係が解消したり、相続できるはずの財産相続の権利を失ったりということがあります。
また、失踪というよりも逃亡していた、リンゼイさん殺害事件の市橋受刑者は、失踪直後に人相を変えるための自己整形手術を行い、その後は北関東周辺を放浪したり、沖縄県のオーハ島にて魚やヤシガニ、時に毒ヘビを食べるなどのサバイバル生活をしていたと供述しています。
失踪中に暴力団事務所に目を付けられ、衣食住を提供してもらうかわりに犯罪に加担してしまうケースも多くあります。
このように、失踪は得るものよりも失うものの方が多く、物理的にどうにかなることはあっても、精神衛生上よくないものだということは言うまでもありません。また、失踪者の身を案ずる周囲の人間に多大な心配と迷惑をかける行為です。
失踪者の探し出し方
本記事の最後に、身近な人が失踪してしまった人向けに、失踪者の探し出し方についても記述していきます。方法としては、以下の3パターンです。
自力で探す
こつ然と姿を消した人の捜索を素人が行うのはとても難しいことですが、それでも居場所の手がかりを探す術が全くないわけではありません。詳しい捜索の仕方については、以下の記事を参考にしてみて下さい。
警察に捜索願を届け出る
事件性があると判断した時には、警察に行き、捜索願を届け出るのが一般的です。ただしこの時、事件に巻き込まれたという証拠を提出したり、家出人がいたとみられる現場から血痕が見つかるなどしない限りは、捜索に踏み切ってはくれません。
※家出人が13歳未満であれば捜索に積極的になってくれるケースもあります。
探偵に所在調査を依頼する
初動が遅い警察とは対照的に、探偵ならば調査依頼を受けたその瞬間からすぐに所在調査を行うことが可能です。この際の調査費用は自己負担となりますが、失踪者の安否が気がかりであるという場合は警察に任せる以外の捜索手段も必ず検討すべきです。
今回の記事で解説した失踪の仕方は、あくまでも用意周到な人のパターンになります。
中には逃げるようにして失踪し、冷静さを欠いているためにボロが出やすい人もいるでしょう。
また、中には長らく失踪を経験したことで「いよいよ探して欲しい」「見つけ出して欲しい」「帰りたい」という心理状態の人もいるかもしれません。
いずれにせよ失踪を長期化させておくことは、社会的に考えても失踪者の安否を考えても、得策ではありません。
警察への相談で初動が遅いと感じた時は、別の調査機関への相談も検討してみましょう。
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